比内地鶏について

【比内の由来】

比内地鶏の生まれ故郷は、秋田県北部に位置する「比内」。その名はアイヌ語に語源があるとされます。古来より自然資源が豊かで、他地域との接点にありました。「火内」が文献に登場するのは、かつて蝦夷が住んだ時代、朝廷の支配に対し蜂起したときのことです。

現在の大館市のある場所は、昔「ヒナイ」と呼ばれていて、文字は比奈韋、比流奈韋、火内、肥内、比内と幾通りもあります。その語源はアイヌ語にあると言われ、Sat(乾いた)-pi(小石)-nay(沢・谷川)の最初の音が取れたものと考えられています。
文献上に「ヒナイ」が登場するのは、878年の『日本三代実録』です。この文献によると、秋田郡内で独立を求め蜂起した12のムラの中の一つが「火内」でした。奥州藤原氏の終焉を描いた『吾妻鏡』には肥内郡として登場し、地方豪族河田氏の支配下にあったことが伺えます。鎌倉幕府成立以降は浅利氏による支配が続きました。比内の地は自然資源が豊かであり、秋田と南部、津軽地方との接点にあったことにより、戦国時代には抗争の場となります。豊臣天下の1590年に比内郡は秋田郡に編入され消滅したと言われます。

【比内鶏について】

比内地鶏のルーツ、比内鶏。
比内鶏は秋田県北部の在来種。野鶏に近い性質を持ち、山鳥に似た風味とコクを持つとされ、昔から食肉鳥として重宝されてきました。

その眼光はやや鋭く栗茶色、三枚冠で耳朶赤茶色、嘴は暗褐色、蓑毛・尾翅は比較的豊富です。
日本地鶏の在来種で、比内地方で古くから飼育され、肉用に供されてきました。最も改良が遅れ、かつては大館周辺にしかいない地鶏でした。旧藩時代は藩主に年貢として納められていたと言われます。
性質は野生に近く、勇壮活発と言えます。特に育雛時は外敵を防ぎ、雛を擁護しながら猛然と敵に立ち向かう様相は野鶏そのものであると言われます。野原や畑などに放し飼いされ、野草などを啄んで育った比内鶏の肉質はとてもよく、風味豊かなものです。
昭和8年に調査に訪れた鏑木外岐雄博士が比内鶏に注目したことをきっかけに、昭和17年に「羽色、体型が美麗である純粋な日本地鶏で、学術的にも保存する価値がある」として国の天然記念物として指定を受けました。比内鶏は声良鶏・金八鶏と共に秋田三鶏と呼ばれ、保存会が種の保存・繁殖に努め、毎年展覧会も開かれています。

比内鶏
比内地鶏の価値

【比内地鶏の価値】

「比内地鶏」は昭和48年に種鶏・孵化・育成・処理業者が一体となり、小型で飼育が極めて難しい鳥を育種、改良し作り出されました。比内鶏のオスとアメリカ原産のロードアイランドレッドのメスをかけ合わせたことにより誕生したのです。
赤みが多くしっかりとした肉質と、冷涼な気候が育んだ甘みを含む脂、鶏卵には濃厚なコクがあります。鶏でありながらキジやヤマドリのような濃厚な風味と香気を備え、噛むほどに味とコクが際立つ比内地鶏。名古屋コーチン・薩摩地鶏と並び日本三代美味鶏に数えられ、県外の飲食店からも高級食材として注文が多い鶏肉です。最近の研究では、比内地鶏の肉にはイノシン酸やアラキドン酸などの旨味成分が豊富なだけでなく、カルノシン、アンセリンといった疲労回復成分も含まれることが分かりました。
本来の肉質を保つため、飼育の基本になるのは「放し飼い又は平飼い」です。出荷まで約160日を目処に、外敵の侵入から守られた放牧場でのびのびと運動し、比内地鶏専用の飼料を食べて育ちます。生育の仕上がり状況を見ながら、段階的に出荷します。
また食用肉としての安全性を守るために必須としているのが、定期的な食鳥検査です。どの過程においても不合格になった場合は、異常の程度によって一部または全部が廃棄されます。
調理方法を問わず美味しくいただける食材としての比内地鶏。その価値は、徹底した生産管理と品質管理に裏付けられています。

【比内地鶏の流通・生産工程、品質管理】

比内地鶏の生産・品質管理は秋田県で定める厳しい基準を遵守しています。
初生から30日齢頃までは、保育器の中で飼育し、放牧場内の簡易鶏舎で1週間程度飼育した後、120日以上「放し飼い」または「平飼い」とします。
トータル150日以上(地鶏では日本一の長期飼育)を過ごす放牧場は転作田を利用したクローバー主体の草地で、1,000羽あたり1500㎡(1坪2羽)を基準とし、外敵の侵入を防ぐため外周には防鳥ネットやフェンスが設置されています。
飼料は初生から120日齢までは、レイヤー飼料を日齢にあわせて給与します。その後出荷までの期間は、比内地鶏専用の仕上げ飼料を給与し、脂肪の質・量ともに最近のヘルシー志向に合わせています。
160日齢を基本として、仕上がり状況を見ながら段階的に出荷します。

生産や品質管理システムとして自動モニタリングシステムを導入する事業所もあり、生産者は一体となって安全・安心のための取り組みに努めています。

比内地鶏の流通・生産工程、品質管理

【比内地鶏ブランド認証制度】

比内地鶏ブランドに対する消費者等の信頼に応えることを目的に、秋田県では平成20年度からトレーサビリティ・システムを組み込んだ「秋田県比内地鶏ブランド認証制度」をスタートしました。また、平成21年からはDNA識別が導入されました。
認証対象は、県内の①素雛生産者②比内地鶏生産者③食鳥処理業者④食肉処理業者⑤加工食品製造業者⑥仕入・販売施設の6事業者です。
申請の後、県による書類審査及び現地調査を踏まえ基準に適合する場合は、認証事業者である旨を証する認証票が交付されます。
(1)厳格な基準の遵守
国の基準(特定JAS)よりも厳しい生産・管理基準の遵守
素雛 秋田比内鶏(雄)とロード種(雌)の交配で作出された 一代交雑種であること
飼育期間 雌:ふ化日から150日間以上飼育していること
雄:ふ化日から100日間以上飼育していること
飼育方法 28日齢以降平飼いまたは放し飼いで飼育していること
飼育密度 28日齢以降1平方メートル当たり5羽以下で飼育していること
(2)情報の開示と生産流通履歴の管理
トレーサビリティ・システム(ロット単位)を組み入れ、履歴を遡及できる体制専用HP等を活用し、素雛・生産・処理加工の各段階において徹底して情報を開示
(3)監視・チェック体制
認証事業者からの報告徴収と立入調査の実施

秋田県では比内地鶏飼養管理マニュアルを、比内地鶏生産部会では飼育管理マニュアルをそれぞれ作成し、自治体、業者が一体となって、均一でより高品質な比内地鶏を生産し、安全・安心と共に出荷することを徹底されています。